クビアカツヤカミキリの見つけ方
狙われるのは、サクラ・ウメ・モモ・スモモ・アンズ・プルーン。日本の庭で気をつけるのは、この6つです。樹皮が粗い古い木ほど、産卵の場所に選ばれます。
まず覚える5つ
首が赤い、つやのある黒い虫体長2.5〜4cm。6月から8月に幹の上で見られる
サクラ・ウメ・モモに入るスモモ・アンズ・プルーンも。古くて大きな木ほど入られる
根元に、うどん状の木くずフラスと呼ぶ。幼虫は木の中なので、見えるのはこれだけ
幹に、縦に長い楕円の穴長いほうが2〜3cm。成虫が出ていった跡
人が木を運ぶと、遠くへ広がる伐った木は、成虫が出る4月ごろまでに砕く・燃やす
絵はこのサイトで描いたもの。中身は環境省の同定マニュアル・森林総合研究所・群馬県・国の防除戦略による。
10月までは根元のフラスも見る。被害木の伐採は、成虫が出ない秋から冬に。補助のある市町村では、作業の前に申請する
木の中で起きていること

- 外樹皮 木を守る皮。成虫はこの割れ目に卵を産む
- 内樹皮 葉で作った養分を、根へ運ぶ通り道
- 形成層 毎年新しい細胞を作って、幹を太らせるところ
- 辺材 根で吸った水を、上へ運ぶ通り道
- 心材 木を支える芯
- 幼虫の坑道 内樹皮と形成層に沿って、横へ食べ広げる。長さ50〜60cmになることもある
- 蛹室 育った幼虫が材の奥に作る部屋。出口を先にかじり、薄い皮だけ残しておく
幼虫が食べるのは、樹皮のすぐ下の、養分と水の通り道です。食べられたところから先へは養分が届かなくなり、その先の枝から枯れていきます。一本に何匹も入ると、幹のまわりが広く食べられて水も上がらなくなり、木全体が枯れます。1年から数年で枯れることがあります。
古くて大きな木ほど入られます。中国の河北省のモモ園では、12年生の木の88.9%が被害を受け、6〜7年生は6.5%でした。名所の古い桜並木が危ないのは、このためです。
広がると困ること
- 桜の名所と町の景色 国の防除戦略は、名所や地域の景観を象徴する桜が失われつつあり、暮らしや文化、観光への影響が強く心配される、と書いています。埼玉県行田市の武蔵水路では、桜並木405本のうち9割を超える木が被害を受けました
- 果樹の産地 ふつう30年ほど実をつけるモモが、被害を受けると10年ほどに縮みます。徳島県では、いちばんひどい園で3分の2の木が枯れました。実に害はなくても、フラスが出た木は伐るしかないことが多く、和歌山県はウメの産地への広がりを警戒しています
- 人の安全 弱ったり枯れたりした木は、枝が落ちたり倒れたりします。国は道路・公園・観光地・学校で、けが人が出る前に伐るよう求めています
- 持ち主の手間 防除は、木や土地の持ち主がするのが基本です。庭の桜や梅も同じです
見つけるのが早いほど、守れる木が多くなります。国の防除戦略は、出たばかりの地域なら、すぐに徹底して防除すれば短い期間で地域から根絶できる可能性がある、と書いています。
1年の見回り
卵から成虫まで、基本は2年です。成虫が出るのは初夏で、出たその日に交尾し、2〜9日後から卵を産みます。卵は10日から2週間で孵り、幼虫は4月から10月に食べ、冬は休みます。2年目の秋に蛹室を作り、3年目の初夏に成虫になって出てきます。成虫が外で生きるのは2週間から1か月ほどで(国立環境研究所・埼玉県)、成虫のまま冬は越しません。
- 成虫が出る季節 6月・7月・8月
幹に止まる、首の赤い黒い虫を探す。根元のフラスも見る。見つけたらその場で捕殺 - 根元のフラスを見る季節 3月・4月・5月・9月
サクラ・ウメ・モモの根元に、うどん状・挽き肉状の木くず(フラス)がたまっていないか見る - 被害木の伐採を段取りする季節 10月・11月
10月までは根元のフラスも見る。被害木の伐採は、成虫が出ない秋から冬に。補助のある市町村では、作業の前に申請する - 幼虫が木の中で休む季節 12月・1月・2月
外からは見つけにくい。伐採した被害木は、成虫が出る前の4月ごろまでに破砕・焼却・くん蒸する
1 根元のフラス
いちばん確かな手がかりはフラスです。幼虫が木の中で出す、木くずと糞の混ざったもの。うどん状、あるいは挽き肉状に押し出されてきます。幼虫は木の中に基本2年いて、外からは見えません。見えるのはフラスだけです。
フラスは根元にたまるだけでなく、葉にからみついていたり、幹が二股に分かれるところにたまっていたりします。上から落ちてくるためです。たまっている場所の上の幹や枝に、出し口があります。はじめは地面に近いところから出て、加害が進むと、幹の上のほうからも出ます。フラスの太さは、若い幼虫で2mmほど、育つと8mmほどになります。


ほかの虫のフラスと分ける
フラスを出す虫は、クビアカだけではありません。見分けの手がかりは3つです。
- 木の種類 サクラ・ウメ・モモ・スモモ・アンズ・プルーンから出ているか
- 量 クビアカは大量に出る。幼虫が大きくなるほど増える
- 形 育った幼虫は、挽き肉状に連なったフラスを出す。ほかの虫の多くは粉状
在来のカミキリムシや他の昆虫にもフラスを排出する種がいるが、バラ科樹木から大量のフラスが確認された場合はクビアカツヤカミキリを警戒する必要がある
環境省 特定外来生物同定マニュアル 昆虫類

2 成虫
成虫が木から出てくるのは6月初旬から7月下旬。春の進みが早い年は5月末から出ます(森林総合研究所)。農林水産省の資料は、幅を持たせて6月から8月と書いています。

- 前胸(首)が赤い ただし海外では前胸が黒い個体も確認されている
- 前胸の側面に、とげ状の隆起が左右1対 いちばん確かな決め手
- 光沢のある青みがかった黒 やや扁平。体長2.5〜4.0cm
- 雄の触角は体長をはるかに超える(2倍近く)。雌は体長と同じくらい

似た虫
国内に、同じ仲間の在来種が1種います。ジャコウカミキリ。前胸が赤く体の形も似ていますが、全体が青から緑青色で、黒みがかりません。分布は北海道だけです。
成虫が出た穴(脱出孔)は縦長の楕円で、長いほうが2〜3cmほど。脱出孔があるということは、少なくとも数年前から入っていたということです。
3 見つけたら
- その場で捕殺する(生きたまま運ぶ・飼う・保管するのは外来生物法で禁止。成虫も幼虫も卵も対象)
- 写真を撮る(成虫、フラス、木の全体、場所)
- 市町村の環境担当課か、都道府県の窓口へ知らせる。窓口は 都道府県のページ に載せています
環境省が、全国の確認・被害の情報を集めて地図で公開する仕組み(仮称 クビアカ発見・通報ネット)を試しています。期間は2026年10月13日から11月30日まで。届いた情報は誤りを除いてから地図に載り、2027年4月の本格運用を目指しています。
情報収集フォーム 公開の地図 (環境省の報道発表)
自分の木でなくても、被害に気づいたら市町村か都道府県の窓口へ知らせてください。外来生物法には、自治体の職員が必要な手続きをしたうえで他人の土地に入り、調べたり、被害木を伐採したりできる決まりがあります(第17条の3・第17条の5)。国の調べでは、この決まりはまだほとんど知られておらず、使われた例も確かめられていません。国はこれから手引きを作るとしています。
(第3回クビアカツヤカミキリ対策本部 資料(2026年10月15日))
なぜ捕殺するのか
クビアカがサクラを食べるのは、この虫の暮らしそのもので、虫に悪意はありません。日本に運んできたのは人です。だから捕殺の重さは、虫ではなく、捕殺する人の側にあります。
- 理由があるときだけ サクラやウメを守るため、広がりを止めるため。その目的のためにだけ捕殺します
- 苦しませない 昆虫にも意識的な経験がある現実的な可能性がある、と研究者たちが2024年に宣言しています。分からないなら、苦しませない側に立ち、その場ですばやく確実に
- 間違えない 虫を見分けられるのは人だけです。前胸の赤と、とげ状の隆起を確かめてから(似た虫)
日本には、虫塚や草木供養塔のように、奪った命を覚えておく習わしがあります。捕殺は、木を守るために人が引き受ける仕事です。
捕殺が効くのは、出てきてすぐ
成虫は、木から出たその日に交尾でき、2〜9日後から卵を産みはじめます(東京都)。1匹のメスは数百、多いと1,000個を超えて産みます。イタリアの室内の実験では、メスは卵のおよそ半分を、出てから最初の1週間で産みました(Russo ほか 2020)。

東京都の手引は、数百の卵を持ったメスを1匹でも捕殺できれば、それだけ広がりを抑えられる、と書いています。一方で森林総合研究所などの手引は、卵をほぼ産み終えたメスを捕まえても、高い効果は望めない、と書いています。
二つは同じことを言っています。効くのは、木から出てきてすぐに捕まえたときです。網を巻いた木は、6〜7月に1〜2日ごとに見回ります。
見つけた時点で遅い、ということはありません。フラスに気づいた木は、たいてい次の成虫がまだ中にいます。森林総合研究所などの手引は、侵入して間もない地域では、次の夏までに被害木を地域から無くすのが一番、としています。
4 庭の木を守る

庭のサクラやウメを守るのは、木の持ち主が基本です。国や市町村が、情報や助言を出しながら一緒に進める形になっています(国の防除戦略)。
- 見回る 春から秋に、根元と、幹が二股に分かれるところを見る。フラスがいちばん確かな手がかり
- ネットで包む まだ被害のない地域でも、予防としてネットで覆う方法があります。被害のある木を伐らずに残すときは、春から夏のあいだ幹をネットで覆い、出てきた成虫が飛んでいかないようにします。目合い4mmまでの網を、幹から離して巻き(ぴったり沿わせると噛み切って逃げる)、5月末に巻いて8月のお盆のころに外します。6〜7月は1〜2日ごとに見回り、網の中の成虫をすぐ捕殺します。放っておくと網の中で卵を産みます(森林総合研究所・東京都)
- 薬を使う 幼虫の駆除・幹への注入・散布に使える登録農薬があります。木の種類ごとに使える薬と回数が決まっているので、ラベルを守ります。幹への注入は、すでに枯れかけた木には効きません(埼玉県環境科学国際センター)
- 伐る 被害の重い木は、伐倒と伐根が基本です。根株や根に残った幼虫からも成虫が出るので、根を掘り取るか、資材で覆うか、モルタルで固めます
- 補助を使う 伐採や薬の費用を助ける市町村があります。業者を呼ぶ前に、まず市町村に相談するのが順番です(奨励金・報奨金と補助)
木を扱う人へ
- 伐った材を、現場から現場へ運ばない。処理施設へ直行する
- 伐倒木は、成虫が出る4月ごろまでに破砕・焼却・くん蒸する(国の防除戦略)
- サクラ属を移植するときは、掘る前にフラス・脱出孔・樹皮の割れ目を確かめる
- 野焼きはできない(廃棄物処理法で原則禁止)
詳しく学びたい人は 講座・講習会 へ。出前講座を受けている県もあります。
出典 森林総合研究所・農林水産省の資料、埼玉県環境科学国際センター サクラの外来害虫クビアカツヤカミキリ情報https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/center/kubiaka.html 、環境省 特定外来生物同定マニュアル 昆虫類 https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/manual/6hp_konchurui2.pdf 、国の防除戦略(2026年9月11日)https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/kubiaka/attach/pdf/taisaku-18.pdf 、森林総合研究所 クビアカツヤカミキリの生態と探索法 https://www.ffpri.go.jp/pubs/chukiseika/documents/5th-chuukiseika12-3.pdf 、東京都 クビアカツヤカミキリの基礎情報 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/animals_plants-400100a20191204115758336-files-kiso_joho2023 、東京都 クビアカツヤカミキリ防除の手引(2023年3月)https://www.city.taito.lg.jp/kenchiku/kankyohozen/seikatsukankyo/gairaiseibutsu/kubiakatuyakamikiri.files/kubiakanotebiki.pdf 、森林総合研究所ほか クビアカツヤカミキリの防除法(防除法・地域での総合防除への提言)https://www.ffpri.go.jp/pubs/chukiseika/5th-chuukiseika12.html 、国立環境研究所 侵入生物データベース https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60560.html 、Russo ほか 2020 Scientific Reports(産卵の日ごとの数・成虫の寿命)https://www.nature.com/articles/s41598-020-63959-9 、EPPO Datasheet https://gd.eppo.int/taxon/AROMBU/datasheet 、Horrocks ほか 2024 Journal of Pest Science(木の年数・モモの寿命・徳島の果樹園)https://link.springer.com/article/10.1007/s10340-024-01767-0 、朝日新聞 行田市の武蔵水路 https://www.asahi.com/articles/ASTB83TNCTB8UTNB006M.html 、朝日新聞 和歌山県のウメ産地(2023年6月30日)https://www.asahi.com/articles/ASR6Y7HXMR6WPXLB006.html 、The New York Declaration on Animal Consciousness(2024)https://sites.google.com/nyu.edu/nydeclaration/declaration 。図5枚はこのサイトで作ったもの。